ランチプレートを買ってもらった。


ずっと興味があって欲しいなぁと思っていたランチプレートを買ってもらった。
写真を見れば一目瞭然だけれど、お皿がいくつか仕切られている…簡単に言えば「お子様ランチ」みたいなもの。

私の両親は、子ども(私)に自分たち(大人)と同じものを食べさせていた。味覚は子どものうちに定着するから…ということもあっただろうし、何より「子ども用」と称したジャンクっぽい食べ物をあまり好きではなかったように思う。
ところが当時の私は、そんな大人の都合は知ったこっちゃないわけで。スポーツカーをかたどっていたり、可愛いキャラクターがついたプレートに、子どもの好物がいっぱい盛り付けられおもちゃまでついた「お子様ランチ」は夢のごちそうだった。「今日は外食」と言われた時は、必ずといっていいほど「お子様ランチがたべたい」と懇願していたが、それが叶うことはなかった。

ある日、母は近くの大型ショッピングセンターのフードコートに私を連れていき、お子様ランチを注文してくれた。その驚きたるや、まさに青天の霹靂だった。そして嬉々として食べ始めると、母は「早く食べてしまいなさい!」となぜか私を少し叱るように促した。なぜか後ろめたそうな…というか、とっととその場から去りたがっているような、あの時の母の心境は未だにわからないけれど。
私がお子様ランチを食べることができたのは、後にも先にもその時だけだった(と思う)。

味はいつもの(大人と同じ)食事のほうが当たり前に美味しかった。でも、あの楽しさや喜びはお子様ランチに勝るものはなかった。今なら親の思いも察しがつくし、今の私が当時の私にアドバイスするのなら「お子様ランチより普通の食事のほうがいいって」と言うかもしれない。
でも、当時の私が断固として「子どもには子どもの価値観がある!」と主張する。どこかであの「夢のごちそう」を追いかけてやまない自分がいる。

子どもの頃に満たされなかった気持ちの代償…というといささか滑稽で大げさかもしれないけれど、ランチプレートを買ってもらった私は、あの時のようにちょっとウキウキしている。