羞恥心。

仕事の休憩時間、某ファストフードに行った。
私のななめ前に、お母さんと小学校3年生くらいの息子が向かい合って座っていた。
学校の宿題をしているのか、子どもはドリルのような問題集を解いていた。お母さんは答え合わせのようなチェックをしているようだった。
ファストフード店にはBGMで最近よく耳にするJ-POPがランダムに流れていた。「羞恥心」がかかった時に、息子は鼻歌と同じくらいの小さな声で♪しゅーちしん!しゅーちしん!と歌い始めた。その途端、お母さんが「お前!私が計算してるのにうるさいよ!」と声を荒らげて言った。
私は、お母さんが息子を「お前」呼ばわりしていることに驚いた。
名前の呼び捨てとか、兄弟の上の子を「お兄ちゃん!」と呼ぶのは聞いたことがあるけれど、このお母さんはずっと「お前」と呼んでいた。
そして、子どもが少しでも勉強の手を休めると「○○を解け!」とか「さっさと△△をやれ!」とすかさず強い調子で叱る。結局私が食べ終わるまでずっとそれは続いていた。


お母さんはファストフードで何がしたかったんだろう?
常にBGMの流れる飲食の場で集中力の続く子どもがいたら、そのほうが気持ち悪い。子どものしつけで「モノを食べながら歌っちゃダメ」とか「他の人の迷惑になるから歌はやめなさい」というのならまだわかる。でも、ちゃんと勉強させたいのなら図書館や児童館の学習室などに行かせるべきだと思うし、そうやって環境づくりもしないのに「ちゃんとやれ!」などと叱られては、子どもが気の毒に思える。
私がお店を出ようとした頃、答えあわせが終わったのか、お母さんは自分のカバンからスーパーのチラシを取り出して、おそらく帰りに買うのであろうモノに赤ペンでグルグルと丸をつけていた。

私の頭の中には、さっき男の子が歌ってた曲が流れていた。
♪しゅーちしん!しゅーちしん!